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羅臼岳遠征 五日目 (4/24) 極楽平(1.000m付近)~羅臼岳山頂(1,660m)

※記事、長いです。

■おっと、悪天候

 朝4時に、目を覚まします。高緯度にいるため、すでに夜が明けかけていることを、テントの明るさで知ります。
 しかし、ベンチレーターから外を眺めると、濃密なガスに包まれています。風も強く、期待とは異なった状況でした。

 テントの内側には、氷が薄く張っています。
 寝袋に半身を入れたまま、上半身に着れる物は全部着て、次の日曜日の説教の準備をします。
 手も頭も、肌を露出させると耐えられない寒さです。
 時折ベンチレーターから外を見ますが、ガスが晴れる様子はありません。
 しかし、聖書の言葉は、心をあたためてくれます。

 「わたしの目とわたしの心は、いつもそこにある。」第二歴代誌7:16

 神が私自身を住まいとして、目を注ぎ、常に共に居て下さる、と聖書は語りかけてきます。
 
 やがてSuzukiさんも目を覚まし、朝ごはん。
 7:30ごろまで様子をうかがっていましたが、天候は回復しません。
 ひとりでルートを探しにいきますが、完全なホワイトアウト状態で、展望はまるでありません。
 探索の帰り道、自分の足跡を見失うと、テントに帰って来れない真っ白な世界でした。
090424_072700.jpg

 結局、天候の回復を信じて、出発することに。
 ナビは私がさせていただくことにしました。地形図とコンパスと、今シーズンしてきた読図経験だけが頼りです。

090424_072333.jpg
(スパッツのひも、切れちゃったので応急処置)


 それにしてもこんなホワイトアウトは初めてでした。
 自分が尾根に乗っているのか、沢にいるのかすら分からないのです。
 とにかく、磁石が指すままに歩みます。

090424_081504.jpg
 
 そう言えば、北方民族がヨーロッパとの交易を始めた時、手に入れたものの一つが磁石だったとか。(北方民族博物館で勉強しました)
 「こりゃまた便利な!」と思ったでしょうね。

 正規の登山道ではなく、山頂直下の岩峰に直接アクセスするよう、磁石をセット。
 地面そのものにエビのしっぽがびっしりとうろこのようにしきつめられており、アイゼンでざくざく踏みながら登ります。これも、初めての体験でした。

090424_101526b.jpg
(クリックで拡大します)


 二時間半で岩峰基部に到着しました。
 岩は氷とエビのしっぽで覆われて、岩肌そのものは一切見えません。
 ガスが晴れないばかりか、オホーツクからの風はますます強くなってきました。
 まつげが凍り始めたのでゴーグルをつけます。
 まつげだけでなく、風が吹きつける側は、体と言わず、ピッケルと言わず氷がつき始めます。首からさげていたカメラも白く凍っており、ザックにしまいます。
 また、コンパスをもっていた指先も、オーバーグローブが凍って、感覚が麻痺しはじめ、インナーグローブを取り変えて、マッサージします。

090424_120729.jpg

 すべてを凍りつかせるのが、この烈風の役割なのだと実感しました。
 展望は相変わらず悪く、山頂の岩峰基部のどのあたりに居るのかは正確には分かりません。
 ただ、この氷と風のてっぺんに山頂があることを知っています。
 
■山頂で一時間半

 「よし、行くか。」と決断し、氷の塊になっている岩に取り付きます。
 風にバランスを崩されないように気を使いながら、登り続けます。
 幸いザイルを出すほどの難所はありません。
 20分ほど無心に登り続け、ついに、それ以上高い所が無い場所に立ちました。
 10:20、羅臼岳山頂です。

rausutop.jpg
(風つよいです。)


 標識も何も見当たりません。
 岩についていると思われるエビのしっぽをピッケルでかくと、なんとその下は青氷でした。
 標識は氷の下なのでしょうか。

090424_112143.jpg

 広くは無い山頂で、なんとか風の弱い場所を見つけて、ひたすら展望が開けるのを待ちます。
 ガスはすさまじい勢いで流れていきます。太陽の位置がぼんやり分かりところを見ると、ふもとは快晴なのでしょう。この山頂もやがて晴れるはずです。
 時折ガスの切れ目から、一瞬だけ、オホーツク海や斜里の町並み、羅臼側の太平洋が見え、またガスに消えます。

090424_105107.jpg

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(クマスズも凍ってます)


 ガスが切れるたびに、「おぉーっ!」「キタ!!」と立ち上がるのですが、またしょぼんとして座る私たち。
 何と90分も粘ったのですが、天候は回復しませんでした。
 羅臼岳そのものの姿はもちろん、他の連山の姿も見ぬまま、下山することになるとは・・。

090424_120332.jpg

■彷徨

 事件は、岩峰基部に降りてから起こりました。
 ホワイトアウトの中、私は登山道に向けて北西にセットするべきコンパスを北東にセットしてしまったのです。
 結果、大沢に下るはずが、羅臼平を通って、羅臼町側の斜面を下ることになってしまいました。
 歩いている感覚からすると、地形図の斜面とはマッチしません。しかし、コンパスしか信じるものがない以上、歩き続けました。
 ひょっとして磁極が逆転したのか、と携帯電話のデジタルコンパスと照らし合わせますが、コンパスの磁北は間違っていません。

 一瞬ガスが切れて、海までの地形が一部見えますが、地形図から想定していたイメージと合いません。(当たり前)
 今度は携帯電話のGPS機能を呼び出して、緯度と経度を確認することにしました。以前の携帯電話では出来ませんでしたが、今度の携帯電話では圏外でも簡易GPSが使えます。
 北緯44度・・・と表示される数字を地形図にあてはめると主稜線南側斜面に該当しました。
 が、簡易GPSなんてやっぱり当てにならないなぁとさらに北西に行くつもりで北東に・・・。
 突然、目の前に険しい岩稜(三峰南側基部)が現れます。どう考えて地形図と合致しません。完全に居場所を見失ったのです。

 とりあえず、岩稜を避けてトラバースして進みます。

 心で神に祈りました。
 「天のお父さん。Suzukiさんを助けて下されば、僕のいのちは・・・と言いたいところですが、私が今ここで死ぬのがあなたの御心とは思えません。死ぬ時はキリストのために死にたいのです。」

 こう祈りつつ、今後取るべき行動を頭の中で整理します。
 あとどれくらいの時間ルートを探すための猶予があるのか、ビバークに備える装備は十分か、気圧配置や地形から、今後展望が得られる可能性はあるのかどうか、下山が遅れた場合の教会の働きについて。

 再度携帯電話でGPSを確認します。
 数値情報は、三峰南側直下を指していました。
 そして初めて、コンパスのセットをミスしたらしいことに気付きました。
 そして、自分たちが今、これ以上何一つミスをしてはならないことを悟りました。

rs.jpg
(こういう仮説を立てました。クリックで拡大。)


 現在地点を予想し、北方向に主稜線があるという仮説を立てます。仮説が正しければ、それをたどって羅臼岳方面に帰れるはずです。仮説が間違っていれば、それは完全な遭難を意味します。

 岩稜を回り込むと急斜面が上に続いていました。
 アイゼンの前爪を利かせて登ります。
 それは、神と私の絆についてリアルに問われる時間でした。 

 「わたしの目とわたしの心は、いつもそこにある。」第二歴代誌7:16

 私は神がいつも共にいて下さることと、最善のことしかなさらないことを知っていました。その確信が、私の心と足を支えていました。

 道を失ったホワイトアウトの雪山で、吹きすさぶ凍った風の中、信頼してついてきてくれるもう一人の命の責任を感じながら、私はみことばを想い、主を想いました。

 そして尾根の上に立ちました。
 登山道とは思えない、やせた尾根でした。

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■ギフト

 一瞬ガスが切れて、回りの様子が少し見えました。ここより高い場所は近くになさそうです。これが主稜線なら、南西方向に羅臼岳があるはずです。
 後続して登って来るSuzukiさんに、つとめて元気な声で「ここが主稜線のはずです!」と叫びます。
 でも、もしこの先に羅臼岳が無かったら・・・。

 その時、何もかもが解決する時が来ました。

 目の前のガスが突然薄れていき、雪煙をまとった羅臼岳山頂が出現しました。
 そしてそれは、知床に来て初めて私がこの山を見た瞬間でした。

090424_141136.jpg

 何もかもが美しかったです。

090424_140737.jpg
(クリックで拡大します)


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(クリックで拡大します)


 ガスはさらに晴れ、広がる展望はすべてのことを教えてくれました。
 自分達が登山道を間にはさむ三峰(みつみね)の南稜上にいること、帰るべきルートはどれか、テントのある羅臼平も、さらにふもとの斜里の町も、オホーツク海に至るまで全貌が明らかになりました。

 しかし数分後、羅臼岳も知床連山のそれぞれの頂きも、再び雲の中に消えていきました。

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 陽のあたる美しい斜面を下山しながら、私は祈りました。
 「お父さん、ちょっとやり過ぎですよ・・・。」
 確かにあの90分の彷徨がなければ、あの数分間をあの場所で過ごすことはありませんでした。
 すべてが出来過ぎていて、神のなさることの美しさを思わされました。

ste1

 ガスが晴れてしまえば、下山はあっけないものでした。
 テントもすぐに見つかりました。(分かりますか?)

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 オホーツクに日が傾く様を楽しみつつ、真新しいヒグマのトレースを使わせてもらったりしながら、心楽しくのんびり下山をしました。

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「オツカレー」
「ただいまー」

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 私を最後まで信頼してくださったSuzukiさん。
 感謝。

 岩尾別に着いたころは夕暮れが迫っていました。
 その道すがらも、旭川での深夜の夕食の時も、そして夢の中でも、あの美しい羅臼岳の光景は鮮明に脳裏に刻まれていました。

※おまけ画像・・・オホーツク展望からの360°パノラマ (クリックで拡大します。)
tenbo.jpg

| Outdoor | 09:16 | comments:16 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

よくぞご無事で・・・

 Stephanさんこんばんは。

 いや~、手に汗、それどころか大汗をかいてしまったではないですか!

 今岡山にいらっしゃるのだから、ご無事だった、ということは分かるのですが・・・。

 これはちょっとすごすぎですよ。この間のヒグマもそうですが・・・。

 やはり神様に愛される方々は守られているのでしょうか。

 でも、今後の登山ではくれぐれもお気をつけて。

| irisno2 | 2009/05/08 19:43 | URL | ≫ EDIT

ご無事で帰られたことを知っていても、
やはり、怖すぎです。
ギリギリのところでも神様を信じきれる信仰に
神様は恵みを下さったのですね。

ほんとに、今後の登山はご安全に。

| ゆきこ | 2009/05/08 21:24 | URL | ≫ EDIT

いや~面白い展開ですね

試練が無ければ充実した登山にならないことは事実ですが苦労もしたくない。今後どうしましょうか・・・・。

羅臼岳は私にとってもハッピーエンドで終わる美しいミニドラマになりました。ハッピーエンド編のベスト2にランクインしておきます。

| suzuki | 2009/05/08 22:07 | URL | ≫ EDIT

なにもかもが美しすぎます。

この景色言葉で表現するのは無理なような気がします。

| cahcap | 2009/05/08 22:46 | URL | ≫ EDIT

お二人が山に愛され、山を愛しているからこその
山行だったことがわかるような気がします。

| cavatina | 2009/05/09 17:03 | URL | ≫ EDIT

北に向かってお箸を持つ方が東

⇒irisno2さん

 神様はすべての人を愛していらっしゃいますよ。
 でも、それを自覚していると、強い力が湧いてくるのだなぁと思ったことでした。

 それにしても、東と西を間違えるなんて、私らしいビッグな粗忽でした。

| Stephan | 2009/05/09 18:34 | URL | ≫ EDIT

もう間違えません

⇒ゆきこさん

 同じミスはもうしないものと思います。
 
 実際に、方角を間違えたことに気付いた時は、血圧が下がっていくのが分かりました。

 もしも、信仰から来る平安がなければ、もっと深刻な事態に陥っていたと思います。

| Stephan | 2009/05/09 18:52 | URL | ≫ EDIT

⇒suzukiさん

 いい山になりました。感謝です。
 屋久島と羅臼と、二つの世界自然遺産の山を登れて、私は幸せです。

 漠然と思うのは、大雪山系のテント縦走はいつかしてみたいですね。5月下旬でしょうか。ソロで行くのもよさそうですね。日程的にやや厳しいかな。でも、広い尾根をどこまでも歩いていくのはあこがれますね。

 あとは、残雪期の槍でしょうか。
 このあたりを少しずつ調べてみたいな、と思っています。

 ハッピーエンド第一位のお話し、また聞かせて下さい。

| Stephan | 2009/05/09 19:24 | URL | ≫ EDIT

⇒cahcapさん

 羅臼岳の突然の出現の映像は、私の心の中にずっと刻まれています。
 おそらく何年経とうとも、それが色あせることはないのだと思います。

 山は、美しいですね。

| Stephan | 2009/05/09 19:27 | URL | ≫ EDIT

⇒cavatinaさん

 山に愛されているかどうかは分かりませんが、山々を造られた神に愛されていることは信じています。

 自然界は私にとって字の無い聖書です。
 尾根や沢をなぞると、多くの発見と感動があります。

 でも、安易な読み方をすると、かえって危険だな、とも思います。

 これからも真面目に山を愛していきたいです。

| Stephan | 2009/05/09 19:36 | URL | ≫ EDIT

お疲れ~。

良い経験をしましたね・・・と言えるのも無事だったからですな。

ある程度冷静に行動できて何よりです。
こういう時は総合的な実力が試されるんでしょうね。

やればやるほど危険な世界・・・とおっしゃったのはスズキさんでしたな

私もその端っこを噛み締めつつあります。

| のほ | 2009/05/09 21:35 | URL | ≫ EDIT

風速10m位?  時折突風? 零下20度位?  面白いシュカブラです。
雪面下が 固い氷だとのお話 ブルーアイス画でやっと理解できました。

神々しい位の 白き羅臼登場! (圧巻   古里 安達太良に似ています
今回も 心に残る いい山行のご様子 よかったですね。

| Tenco | 2009/05/10 08:24 | URL | ≫ EDIT

⇒のほさん

 遭難はいくつかの要因が重なる時に起きやすい、と何かの本で読みました。
 今回の道迷いに関してもそのことを実感しています。平常心を保てたことは、大きな助けでした。

 安全は、一つ一つの要因を減らしていくことが大切なのでしょうね。
 今後も努力を惜しまないようにしたいと思います。

>私もその端っこを噛み締めつつあります。

 お互い、安全第一で楽しみましょう!

| Stephan | 2009/05/10 18:31 | URL | ≫ EDIT

⇒Tencoさん

 大切な時期に御主人さまを送り出して下さり、本当にありがとうございました。

 そしてご心配もおかけしました。
 
 帰宅した日の夜は、風の音を聞くと羅臼岳での彷徨が思い起こされてきて、寝つかれませんでしたが、今ではだんだんと美しい光景だけが残りつつあります。

 明日、お借りしていたホイッスル、お返ししますね!

| Stephan | 2009/05/10 18:35 | URL | ≫ EDIT

先生、本当にご無事で何よりでしたー。

こちらに住んでいても決して見ることのできない素敵な景色をたくさんありがとうございました。
(野生のヒグマだって見たことありません(笑))

夏の知床もとっても素敵です。(観光客だらけですけど・・・。)
次回は是非奥様とご一緒にー♪

| iruka | 2009/05/11 08:12 | URL | ≫ EDIT

⇒irukaさん

 ありがとうございます。
 無事に帰って来ました。

 野生のヒグマを見るのは、そちらの方にとっても日常的なことではないのでしょうか。
 いい経験できて、感謝です。

 そうですね、いつか妻と行きたいです。

 irukaさんのコンパスが、良い答えを与えてくださいますように。お祈りしますね。

| Stephan | 2009/05/11 22:11 | URL | ≫ EDIT















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