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大雪山縦走 前夜

Date:2010/9/12 Sun.

■離陸

 いつも思うことなのですが、あんなに重たい金属製の飛行機が、どうして宙に浮くのでしょう。

 二時間前まで、教会でカラーのついたシャツを着ていた私は、搭乗手続きをすませて、エコノミークラスの窓際に座って離陸を待っていました。

 重たい飛行機が空を飛ぶのと同じくらいに、自分が大雪山へ休暇旅行に出かけられるということが、半信半疑な気がしていました。

 休みを取ることが、こんなにハードだった休暇はありませんでした。
 倒れることなく、休暇に手が届いて良かった・・、それが正直な気持ちでした。

 やがて、ジェット機は滑走路に進入し、離陸態勢に入りました。
 次第に速度をあげ、エンジンがブーストしたかと思うと、ついに機体は陸上を離れました。
 「これは、力技だな」と心でつぶやきます。
 圧倒的な推進力で、飛行機は重力に反して、宙に浮くのです。

 私は、自分が日常とたった今切り離されたのだな、と感じました。休暇が始まったのです。
 牧師としての働きを一旦置いて、代わりにテントと数日分の食糧を担いで、北の山に入ろうとしているのです。

 高度を上げる飛行機の窓からは、瀬戸内海が見え、また眼下に山陽町がはっきりと見えました。
 山陽団地も、ネオポリスも模型のようにくっきり見えます。
 そこに住む、教会の一人ひとりの事を思い、祝福を祈ります。
 やがて、すべては雲の下に消えていきました。

100912_171311PENTAX K-7 (1)

■理由

 その日の礼拝の説教や、祝祷をするとき、どこかで「もしこれが、最後だったら」という気持ちがよぎりました。
 だから、たとえそうなっても悔いが無いように語りました。

 なぜそんな思いをしてまで出かけていくのだろう、と自分に問いかけ、恐らく・・、と自答します。
 独りでいることのこわさ、悲しさ、苦しさを味わいたいのかもしれない、と。
 私は、あまりにもいつも、人々の中に居すぎるのです。
 それゆえ、バランスを取りたいのではないか、と。

 もう一度、神様の前で、たった一人の私として数日を過ごすこと、それを欲している私が居ました。
 
 ・・・・とか言いながら、富士山が見えます、とのアナウンスが流れると、「えっどこどこ!」と席を立ちあがり、逆側の窓まで遠征していく私なのでした。
 浅田真央さんみたいなCAが「あちらです。もう大分小さくなっていますが。」と指さしてくれるのを、「えっ、えっ、見えない、見えない。・・・・あっ見えた見えた!」
 広い機内で、私一人が席を立ってまで富士山を喜んでいたことでした。

 大体において、私の静かな内省は、ことほど左様に30分程度しか持たないのです。

■プリンとクーラー

 羽田の乗り継ぎはスムースで、6時間前に教会に居た私は、すでに北海道上空に居ました。
 上空から見る夜の北海道は、暗いです。
 町の明かりは遠くに点在するだけです。
 ここが、今のところ私の来れる「大自然」の限界の地域なのです。

 旭川空港では、旧友のH先輩家族が迎えに来てくれていました。中標津まで帰るついでに、黒岳登山口(層雲峡)まで乗せててくれることになっています。

 夜の風は冷たくフリースを着こみます。
 なのに、驚いたことに車の中はクーラーをきかせているのです。

「せ、先輩、寒いんですけど。」
「あ、これね。いやぁStephan君に○×プリンを食べさせてあげたくてさ~。」と先輩。プリンが要冷蔵だったために、クーラーを強くきかせて車内で保冷していたとのこと。
さ、冷えている内に食べて。」
「でも、さ、寒いんですけど・・!」

 美味しいプリンを食べさせたいという、友の心の暖かさとは裏腹に冷たいプリンを震えながら頂きます。
 山に上る前から、こんなに寒い思いをするとは思いませんでした。

 時折キタキツネが道路の端に座っています。
 ああ、北海道に来たのだ、と実感したことでした。

■眠れない夜をトイレの横で

 黒岳登山口では、とある公衆トイレの横にスペースを見つけて、テントを張らせてもらいました。
 水道とトイレと平坦なスペース、これがテント泊の三要素ですよね。

 ソフトバンクの電波も今夜までだな、とiPhoneでメールチェック。
 ・・・と、何ともやりきれないメールが届いていました。

 牧師の実務は、岡山に置いて来たつもりでした。
 が、飛行機よりも速く、電波に乗って、ことばは私に追いつきました。テントの中で、しばらく悩みます。
 岡山に居れば、即座に電話なり何なりして、事態の収拾に努めるようなケースです。
 いつも、そうしていました。
 
 ことばって、こわいですよね。
 一度読んでしまうと、心の中にずっと生きていて、痛みを与え続けるのです。

 妻と電話して「帰ろうか」と相談します。
 こういう気持ちでは、夜も眠れず、注意力も散漫になり、今後の登山に危険を伴います。
 妻は、「祈って考えてみたら」との返事。
 目をつぶって眠ろうと務める中で、追伸のメール。さらにエスカレートした内容でした。
 ただただ、悲しく、やりきれない思いでした。

 しかし、最後には「登ろう」と決めました。
 メール送信者のために、神に祈ります。
 神がその人を悪いものから守って下さるように、そして私ではなく、神ご自身がその人を取り扱い、導いて下さるように。

 そう心に決めた時、心に安らぎがありました。
 そして、数分でも多く体を休めるために、目をつぶるのでした。

 テント地をへだてて、ひたひたと小さな足音を立てたのは、キタキツネだったでしょうか。
 寝がえりを打つ私の物音を聞いて、どこかに行ってしまったようです。

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